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福岡高等裁判所 昭和41年(行コ)4号 判決

福岡市比恵本町三丁目二七七番地

控訴人

平井嘉一

右訴訟代理人弁護士

吉野作馬

被控訴人

右代表者法務大臣

田中伊三次

右指定代理人

高橋正

島村芳見

川崎高逸

平田松雄

右当事者間の昭和四一年(行コ)第四号国税賦課処分無効確認等請求控訴事件について、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金四九万二、七五〇円およびこれに対する昭和三七年一〇月三〇日から完済にいたるまで、年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張と証拠関係は、証拠として控訴代理人において、当審で甲九号証、第一〇号証を提出し、当審証人平井和夫、同長淵義雄、同本田光子、同松川ムメの各証言、当審における検証の結果鑑定人土屋清の鑑定の結果および当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、乙第一〇号証の成立は不知、乙第九号証、第一一号証の一ないし三の各成立を認める、と述べ、被控訴代理人において、当審で乙第九号証、第一〇号証、第一一号証の一ないし三を提出し、甲第九号証、第一〇号証の各成立を認める、と述べたほかは、原判決の当該摘示と同一であるから、これを引用する。(但し、原判決四枚目裏一〇行目の「依託」とあるは「委託」と訂正する。)

理由

一  不当利得返還請求について。

当審における審理の結果、当裁判所も福岡国税局長が控訴人に対してなした通告処分および博多税務署長が控訴人に対してなした物品税賦課決定はいずれも適法であつて、控訴人主張の如く重大かつ明白なかしはもちろん取消原因たるかしがあるものとも認めがたく、したがつて右各処分が当然無効であることを前提とする本訴不当利得返還請求は理由がないものと判断する。その理由は、左記補足のほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する(原判決理由の冒頭から同七枚目裏五行目まで。)

(一)  原判決六枚目裏六行目の「右第七号証」の次に、「成立に争いのない乙第一一号証の一、二、三」を加え、同行の「証人平田松雄の証言」の下に「(第二回)」を補足する。

(二)  もつとも当審検証の結果および当審鑑定人土屋清の鑑定の結果によれば、右検証および鑑定の対象となつた氷冷蔵器は、いずれも物品税の課税対象外たる一二立方尺以上のいわゆる九州規格の三貫匁入り氷冷蔵器であることが明らかである。しかしながら、当審引用にかかる原判決挙示の各証拠を総合すると、控訴人は、本件物品税の課税対象となつた日本冷蔵株式会社に対するいわゆる東京規格の三貫匁入り氷冷蔵器のほかに九州規格の三貫匁入り氷冷蔵器をも製造、移出していたことが明らかであつて(この分については、物品税は課税されていない。)前記検証および鑑定の対象となつた氷冷蔵器は、これら物品税の課税対象外である九州規格品であつたことが推認される。したがつて、右検証および鑑定の結果をもつてしては前記認定を動かすに足りず、また以上の認定に反する当審における控訴人本人尋問の結果は、前掲各証拠と対比して措信しがたく、その他これを左右すべき確証はない。

二  国家賠償法第一条第一項の規定に基づく損害賠償請求について。

同条項に基づく損害賠償請求は、国または地方公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行なうについて、故意また過失によつて、違法に他人に損害を加えた場合た発生するのである。しかるに、本件においては、福岡国税局長のなした通告処分および博多税務署長のなした物品税賦課決定のいずれの処分をも適法であつて、控訴人主張の如き違法性の認めがたいことは前記認定のとおりである。したがつて控訴人の本件第二次請求は、すでにこの点において採用しがたい。

三  されば、控訴人の本訴請求をいずれも理由がないものとして棄却した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 原田一隆 裁判官 入江啓七郎 裁判官 安部剛)

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